定款・定款細則・規則
平成23 年4 月11 日
東日本大震災から復旧、復興へ、水文・水資源学会の対応
会 長 椎葉充晴
総務委員長 窪田順平
平成23 年3 月11 日に東北地方太平洋沖で発生したマグニチュード9.0 の巨大地震およびそれに続く津波によって被災された東日本の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
3 月11 日から一ヶ月たった4 月10 日現在、警察庁のまとめによると、死亡された方は13,013 人、行方不明の方は14,608 人です。死亡された方、行方不明の方の数は、今後まだ増えるだろうと予測されています。水文・水資源学会の会員の皆様のご関係の方には、こうした痛ましい事態に遭遇された方もおられます。また、とてもいま、平常に復帰する状態にはなく、避難生活を余儀なくされておられる方もいらっしゃると思います。何とか、はやく、復旧、復興に向けて、日本社会が動いていくことを切望しています。
水文・水資源学会と交流のある諸外国の学会、研究機関の皆様から、水文・水資源学会、あるいは、学会員に対して丁重なお見舞いのお言葉をいただいています。ひとつひとつ紹介することは致しませんが、ここで深甚なる謝意を表したいと存じます。
3 月11 日の地震により、宮城県栗原市で震度7、宮城県、福島県、茨城県、栃木県で震度6 強など広い範囲で強い揺れが観測され、東日本の広い範囲で、揺れによる家屋、建築物、構造物の倒壊、破壊の被害が発生しました。堤防、道路、鉄道などのインフラにも大きな被害が出ました。
また、3 月11 日の地震とそれに伴う余震が多数発生し、強い揺れによって、土砂災害や家屋の倒壊が続いて起きています。また、余震活動地域の外側の静岡県東部、長野県北部、秋田県内陸北部でも震度5 強以上の地震が発生しています。同様に震源から遠く離れた東京湾沿岸地域などでも、地震による地盤の液状化現象により、道路、下水道などの社会基盤、家屋に大きな被害が出ています。
地震そのものも大きな被害をもたらしましたが、地震に続く津波がさらに被害を大きくしました。津波の高さについては、まだ調査が進行中と思いますが、岩手県宮古市の田老地区で37.9 メートルの高さにまで遡上したという例が報告されています。津波の遡上高の国内観測史上最大は、1896 年の明治三陸地震で岩手県大船渡市で確認された38.2 メートルとされるので、今回の津波は、これに匹敵するか、それを上回る規模のものであったと言えます。津波は、河川も遡上して、河口部から内陸にかけて広がった都市を襲い、東日本の沿岸部の多くの町を襲い、家屋を倒壊させ、押し流し、海に持ち去って、破壊しつくしました。河川を遡上した津波の例も報告されています。
また、今回の地震に伴って、東日本の太平洋沿岸では地盤が沈下しており、津波によって冠水した広大な場所が今なお冠水したままになっている地域もあります。
地震とそれに続く津波によって被災した東京電力福島第一原子力発電所の原子炉は、地震の後、緊急停止することはできたものの、津波によって冷却用の発電施設が被災したこともあって、原子炉の冷却には失敗し、一か月後の4 月11 日現在でも、放射性物質による汚染が継続しています。その中で、大気中に放出された放射性物質の降下、降水とともに地表に落下して、流出し、水道施設に侵入するという事態も発生しました。森林、農地の放射能汚染が進むのかが心配されています。原子力発電所の高濃度の汚染水が地下に浸入し、周辺地下水帯、海、河川に汚染が広がっていくのではないかという懸念もあります。
このように、今回の東北地方太平洋沖地震とそれに続く津波、原子力発電所事故によって引き起こされた災害は、我が国の社会基盤に多大なダメージを与え、我々の生活を脅かすものとなっています。特に、河川・水資源管理施設が受けた災害がどのようであり、今後、問題なく機能を発揮していけるのか、放射能汚染物質が大気、降水、流域における水循環を通してどのように移動し、拡散し、変化していくのかを分析・解明していくことなど、水文・水資源学会が取り上げるべき課題は少なくないと考えています。
そこで、水文・水資源学会では、本震災に対し学会を挙げて対応すべく、「東日本大震災対応特別小委員会」(委員長・椎葉充晴、幹事・深見和彦)を総務委員会内に設置しました。関連学会との情報交換・連携を強化しながら、今後本学会として検討すべき課題を見極めつつ、被災された方々の支援と被災地域の復旧・復興に対して水文・水資源学の立場から少しでも貢献できるよう活動を行って参ります。